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連載 新米ママからのお便り

第二回  「生後3ヶ月での手術」

 戸部先生

 お元気ですか?

 娘のヘルニアがみつかってからというもの落ち着かない日々でしたが、先日無事手術がおわり退院しておうちに帰ってきたら、嬉しそうでした。久しぶりに娘の笑顔をみました。

 私自身は入院は悪阻と出産のときくらいしか経験したことがなく、オペなんて逃げ出すでしょう。それくらい病院嫌いなので娘もきっと不安だったでしょうが、よく頑張りました。なにしろ、3ヶ月で全身麻酔をかけるなんて気が気ではありませんでした。

 私は事前にお医者さんたちからはしっかり説明していただいていたにもかかわらず、いざ手術室につれていかれるときには涙が溢れてきて駄目なママでした。

 看護婦さんに「ママも最初だけ入りますか」と言われ、私も手術室のスーツをきて麻酔がかかるまで入りました。一人しか入れないので夫は外にいました。最初きょとんとしていた娘がマスクをつけられたとき大暴れし、そのときに麻酔を吸い込むのですが、またそこで私は泣いてしまい、看護婦さんに背中をとんとんされる始末…。

 事前の麻酔科のお医者さんとの診察ではこのようなことを言われました。

医師:全身麻酔は自発呼吸をしないので、私達が機械で呼吸をコントロールします。

私:??? 自発呼吸をしないというのはどういう意味ですか?

医師:自発呼吸をしないとそのままだと酸素がいかないので、チューブをのどに入れてそこから酸素を送ります。全身麻酔ではそうです。

私:??? (無言)

 その後、全身麻酔によるリスクがかかれたパンフレットを渡され、読んでおくように言われました。後日知ったのですが、つまりはこういうことらしいです。あかちゃんの呼吸は浅いので人工呼吸器により深く安定した呼吸をさせ、酸素の濃度を一定に保つ、ということです。

  自分自身、全身麻酔なんてかけたことないのに、いきなり突きつけられる難しい内容には困りました。きっとお医者さんからすると、赤ちゃんのヘルニアの手術や麻酔なんてしょっちゅうやっていることで、小さな手術に入るのかもしれないです。…が、ママにとっては子どもの入院や手術なんて、夜も眠れないくらい心配な一大事です。

 手術中は夫と病棟のデイルームでご飯食べて、関係ない話をしながら待つこと1時間で呼ばれ、娘を迎えに行きました。

 ドクターに手術の内容について説明を受けていたら、隣のリカバリールームから麻酔からさめた娘の弱々しい泣き声が聞こえてきて、すぐに飛んでいきたくなりました。まだまだですね、私は。ベイビちゃんのことになるとオロオロです。

 今回の入院経験で、私自身いろいろ考えさせられました。

 ママも付き添いで入院します。案外これが大変で、慣れない環境で泣くあかちゃんを同室の方々に気を使いながらあやしたり、お風呂もいつものやり方と違うので大泣きされたり、断食しなければいけないのでお腹がすくのをあやしたり、あとママの食事は出ないので買いにいったり、シャワー室も狭かったりと、正直体力的にもきつかったです。

 でも、そんな不便も私のわがままだったことに気がつきました。

 大学病院の小児外科病棟にはいろいろな病と闘う子どもの患者さんたちがいました。うちの娘のように数日で退院できるヘルニアで入院している場合から、幼い体に人工透析が必要な子たちや重度の心臓病をわずらう子どもなどなど。

 同じ病室には、うちの娘と同じ名前の透析をしている2歳の子がいました。長期間の透析は何ヶ月、いや、何年もの入退院を繰り返します。もちろん連日の入院にママも付き添いです。

 入院した当日に同室の患者さんのママとお話しました。

 私は「ヘルニアなんです、心配で心配で」と言いました。笑顔がきれいで優しそうなそのママさんは「心配ですね、まだ小さいのに」とおっしゃってくれました。そのあと「でも、手術すれば治るんですよね」と、優しい中にも寂しげな表情でおっしゃったのです。

 そのすぐあと、彼女の娘さんは2歳で透析が必要で歩くことができなく、目がみえなくて、ママの介護が必要だと知りました。それ以上のことは聞くことができませんでした。

 娘の2泊3日の入院でオロオロし、不便さに不満を感じていた自分が恥ずかしくなりました。

 最初、気まずくなることを心配し、症状が違う患者さんを同室にしないでほしい、病院は気を使ってほしいと思っていました。でも、あえて同室にいろいろな方がいる状況を神様が私に与えてくれたのだと思いました。

 この世の中には、健康に生まれる子、病気を持って生まれる子、健康に生まれても育つ過程で病気になる子、いろいろな状況で生きている人たちがいて、そして、健康に生まれてきたからといって、その後一生安泰を約束されたわけではないということ、当たり前に健康があるわけではないということ、だからこそ与えられた境遇に感謝していかなければならないこと、そういったことを眠れない病院での夜、わが子の寝顔を見ながらぐるぐる頭の中をめぐっていました。

 どうか、娘と同じ名前のその子が早く元気になりますように、その子のママも娘さんの健康な姿をみて幸せを感じることができますように、そう願わずにはいられませんでした。

 「子どもが夜泣くのは、今日一日楽しかったから明日が来てほしくないからみたいですよ」

 寝る前に泣く娘をあやすとき、笑顔が素敵な同室のママが言っていた言葉を思い出します。

 それではまた書きますね。おやすみなさい。



★★★ これまでに掲載した「新米ママからのお便り」 ★★★


『第1回 36歳のママ、第一子の妊娠と育児の記録』


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